クジラといえば、エコロケーションをする動物とイメージされます。しかし、エコロケーションは歯クジラに見られますが、ヒゲクジラには見られません。歯クジラの頭骨は左右非対称で鼻骨の構造が高度に変更され、この構造で高周波音を発生するのだそうです。
これまで、非対称頭骨の起源は新しいものと考えられてきたようです。しかし、米ミシガン大のJulia Fahlke らが、3700万年前のクジラ、バシロサウルスの頭骨をCTスキャンし、コンピュータ上で作成した3次元デジタルモデルを使って研究したところ、バシロサウルスの頭骨が非対称であることが明らかになりました。この結果、非対称はエコロケーションと関係なく、歯クジラとヒゲクジラが分岐する以前に獲得されたことがわかりました。
非対称の頭骨により、3次元的にどちらに音源があるのか聴く、方向性を持った聴覚を得ていたということです。
Julia M. Fahlkea, Philip D. Gingericha, Robert C. Welsh, and Aaron R. Wood
Cranial asymmetry in Eocene archaeocete whales and the evolution of directional hearing in water
PNAS doi: 10.1073/pnas.1108927108