ジュラ紀のドリヨサウルス科イグアノドン類、Dysalotosaurus lettowvorbecki の椎骨に骨パジェット病の痕跡があったとする報告です。
骨バジェット病とは、メルクマニュアルによると、「骨代謝異常によって骨の一部が肥厚と軟化を起こす慢性疾患」で、サー・ジェイムス・パジェットにより1876年に報告されました。「骨の一部の領域で破骨細胞と骨芽細胞とが過度に活性化し、骨吸収と骨の再構築(リモデリング)がきわめて速いスピードで起こります。過度の活性化が起きた部分の骨は、肥厚はしますが構造的な異常があるため、正常な骨と比べてもろくなります。」
頭骨、骨盤、大腿骨、椎骨などに発生することが多いそうです。その原因としてウイルスが関与すしている強力な証拠があるそうです。ヒト以外ではオランウータンやキツネザルなどの限られた哺乳類にしか見られず、ヒトについても新石器時代までしか遡れないそうです。
タンザニア、テンダグル(後期ジュラ紀、約1億5千万年前)から産出したDysalotosaurus lettowvorbecki の椎体に、写真のように病理学的異常があるため、マイクロCTスキャンにかけて調べたものです。その結果、これは骨パジェット病であり、骨化石にウイルスが存在する最古の間接証拠であるとしています。
Florian Witzmann, Kerin M. Claeson, Oliver Hampe, Frank Wieder, Andr・Hilger, Ingo Manke, Manuel Niederhagen, Bruce M. Rothschild, & Patrick Asbach (2011)
Paget disease of bone in a Jurassic dinosaur
Current Biology 21(17) R647-R648 (13 September 2011) doi:10.1016/j.cub.2011.08.006
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参考:
Florian Witzmann, Patrick Asbach, Kristian Remes, Oliver Hampe, André Hilger, Andreas Paulke(2008)
Vertebral Pathology in an Ornithopod Dinosaur: A Hemivertebra in Dysalotosaurus lettowvorbecki from the Jurassic of Tanzania
The Anatomical Record Volume 291, Issue 9, pages 1149–1155
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