名古屋大学で6月29日から7月1日まで開催されています。私もいつものようにもぐりこんでいます。
シンポジウム「代替指標は、どの程度真実を語ってくれるか」
途中から聞いていましたが、微量な痕跡からこんなことがわかるのかと、少し驚きました。
総会の表彰では、学術賞に佐藤たまき氏ほか、論文賞に伊左治鎮司氏ほかが表彰されました。
30日一般講演。古脊椎の部1は恐竜ならび。人と自然の博物館の三枝先生からは、丹波篠山の追加標本について詳細な報告。限られた時間なので早口になってしまうのが残念ですが、竜脚類以外にこれだけの種類の恐竜がいたのかと、あらためて驚かされます。北海道大学の小林快次先生からはモンゴル、ネメグト層から産出したオルニトミモサウルス類と、中国遼寧省の義県層から産出したテリジノサウルス類の2本。両方とも数十枚のパワーポイントでかなり深く報告されて、聞いているだけでワクワクするお話でした。午前の部は恐竜大当たり!
お昼、ポスター発表でも中生代の古脊椎、いろいろ出ていました。青塚さん他のカナダ・マニトバ州南部上部白亜系Pierre Shale における化石鳥類の多様性、鍔本さんの距骨による化石哺乳類の体重測定、服部さんの非鳥類獣脚類における第1趾の形態および機能に関する研究、増田さん他の北海道平取町の上部白亜系より産出したポリコティルス科、・・目移りします。
村上さん他の北太平洋初産出のラプラタカワイルカ化石では、極低レベルの質問で、「ラプラタカワイルカって海にいるんですか?」と尋ねてしまいました。形態は他のカワイルカに似ていても、ほとんど海で生息しているのだそうです。山下さん他のモササウルスにおけるF値の比較では、これは藻谷先生がオフタルモサウルスで研究したことのモササウルスへの応用だなと、一人で納得したりしました。
午後、一般講演口頭発表2では、つい先日ニュースで報道された、茨城県常陸大宮市で発見されたステゴロフォドン属頭蓋化石について、国府田先生が報告されました。続いて「埼玉県立自然の博物館に就職できた」北川さんが、群馬県立自然史博物館柴川コレクションのステゴドン・オリエンタリスの大腿骨について報告しました。北川さんは、いわゆる真面目な研究者を想像すると、かなりずれる「面白い」方ですが、研究の内容は本当にしっかりしたもので、三枝、国府田両先生に続くゾウ研究の今後は、北川さんに希望が持てるのかもという気がします。
一般講演口頭発表3では、本当に珍しいことですが、IVPPの金昌柱氏が、なんと日本語で広西壮族自治区崇左地域における更新世ギガントピテクス相の変遷について発表しました。ギガントピテクス記載のはじめとなった、竜骨として売られていた歯の記載から、現在の研究状況まで時間いっぱい報告していただきました。"○ー"誌ならネタにするであろうこと。それは、ギガントピテクスの最新の化石は、わずか6万年前のものであること。発表中でも、初期人類と戦う(狩られている?)ギガントピテクスのイラストで出てきました。化石として6万年前のものがあるのなら、実際、もっと後まで生息していたと想像できますよね?
明大西松さんの「中新統の深海成層における深海性サメ類化石の普遍的な産出」では、日本各地の中新統地層から泥岩、砂質泥岩、砂岩を採取し、試料を水洗、乾燥を繰り返し、実態顕微鏡を使って本当に細かい深海性サメの歯を拾い出すという作業を行ったことが報告されていました。国内ではこのような手法は数少ないようです。深海性サメ化石試料が飛躍的に増えれば、そこからいろいろな研究アプローチが生まれるでしょう。
夜間小集会「それぞれの立場から語る古生物学の普及」に参加しました。
瑞浪化石博物館の普及活動報告から始まり、京大や埼玉など各地の博物館の普及活動の報告やこれからの活動への提案などが主な内容だったでしょう。瑞浪市では小学生の誰もが化石発掘の経験をしていると聞くと、東京都とは土台が違うという気もしましたが。
もちろん、そのあとは飲み会。参加人数が多すぎて、お店2軒に分かれて入りました。毎回思うのですが、新しいつながりが、こういうところでできて、本当にいいことだなと思います。今回は、なにわホネホネ団の方たち何人かとも知り合いになりました。カメレオンの骨格やイグアナの頭骨も出てきて、これは撮影でしょう! 一般のお客様からは、顰蹙だったかも。
7月1日一般講演口頭発表4
ロバート・ジェンキンスさん他の講演では「竜骨群集」という新しい言葉が出てきました。現生でもクジラの死体が海底に沈むと、それを餌にする生物がたくさん集まっているのが観察されています。それと同様なことが中生代の海生爬虫類の遺骸でも生じていたということです。実際に博物館に保存されている未クリーニング標本に、現生と同様な巻貝の化石がついている例もあるそうです。骨を出すために削ったり蟻酸につける前に、ぜひ自分に連絡してほしいと強調していました。
鈴木大輔さん他の、「ワニの足関節の構造」は、原生のワニ数種の標本をCTスキャンし、足関節の可動範囲を計測し考察していったものでした。
望月直さん他の「水中滑空する長頸竜類の縦動安定性」では、クビの長い種類、クビの短い種類それぞれの水中での動的安定性について模型と方程式により解析していったもので、クビの長いほうが安定性が高く、その採餌が底生の貝等を対象にしていたことが明らかになっていることから、整合性があるとしていました。残念ながら各変数を用いた解析の部分は私には理解できませんでしたが。
これで古脊椎動物の部のセッションはすべて終わりました。