異歯類(Anomodont)は、単弓類(哺乳類型爬虫類)の中の一分類群で、ディイクトドンやディキノドンも含まれます。かれらの仲間にはペルム紀末の大量絶滅を乗り越えたものもいました。生態系が回復する中で絶滅したもののニッチを埋める形で、生き残ったものは多様化する例が見られるのですが、異歯類はそうならなかったそうです。
英 Lincoln 大の Marcello Ruta らの研究によると、大量絶滅後の回復過程で、異歯類の種は増加したものの、その解剖学的特徴は保守的なままで多様化しなかったそうです。大量絶滅により進化上のボトルネックを乗り越えた際に遺伝子もボトルネックを通過します。あるときには通過後生き残った集団を新たな進化の軌道に乗せることができますが、またあるときには、その後の進化を制約する場合もあるとのことです。ペルム紀末には、異歯類は体の大きさ、生態適応ともに広範囲に放散し、地上の植物食のもの、カバのような水陸両生のもの、穴居生活に特殊化したもの、樹上で暮らすものさえ生息していました。異歯類の様々な解剖学的特徴はその進化史の中で減少していきました。そして絶滅後の回復過程では新しい特徴を進化させませんでした。これは、絶滅時のボトルネックは回復時に進化を制約することを示しています。
これは、異歯類の種数および解剖学的特徴の多様性が同時に変化したことを記録し、史上最も壊滅的な絶滅に対するかれらの対応を定量化した初めての研究ということです。
Lincoln 大ニュース ブリストル大ニュース ベルリン自然史博物館プレスリリース
Marcello Ruta, Kenneth D. Angielczyk, Jörg Fröbisch and Michael J. Benton.(2013)
Decoupling of morphological disparity and taxic diveristy during the radiation of anomodont therapsids
Proceedings of the Royal Society B. vol. 280 no. 1768
doi: 10.1098/rspb.2013.1071 アブストラクト(論文フリー)