鳥類のクチバシ(彼らも獣脚類の一部といえますが)は、軽量化のためと、これまで考えられています。では、非鳥類獣脚類でクチバシを持ったものの、その役割は何か?そこに光をあてた研究が出ています。
英、ブリストル大の Stephan Lautenschlager らは、テリジノサウルス類、Erlikosaurus andrewsi これは約9000万年前のモンゴルに生息していた体長3~4mの植物食獣脚類ですが、この頭蓋にはケラチン質のクチバシがついていて、この役割を研究しています。
研究の焦点は、クチバシが摂食時に頭蓋にとってどんな役割を果たすかです。3Dスキャンしてデジタル化した頭蓋で、歯のある場合、小さいクチバシ、大きいクチバシ、何もない場合等の頭蓋の曲がりや変形を、有限要素法を使って調べてみました。その結果、ケラチン質のクチバシは、噛み、摂食する時の頭蓋歪みや変形を守り安定性を増す役割があることがわかりました。
この研究では、実際の化石でためすことのできない頭蓋の変形や、通常化石として残りにくい軟組織の役割を解明できた点がすばらしいところです。
意義 ほにゃ訳
無歯顎とくちばし(角鞘)は、現生鳥類特有の特徴で、伝統的に飛行の進化のための軽量化要求のためのものとして考えられてきた。しかし、無歯顎と平行してケラチンで覆われたくちばしは、白亜紀前期と同時期の早い時期に非鳥獣脚類に現れている。ここで、白亜紀のテリジノサウルス類 Erlikosaurus andrewsi の頭蓋の高精細デジタル生体力学モデルが、非鳥マニラプトル形類恐竜で発生した形態学的専門化と適応の意義を調査するために、使われている。有限要素法による結果は、ケラチン質のくちばしは摂食中のストレスと歪みを緩和することにより、頭蓋安定性を高める重要な役割を果たしていることおよび、派生した獣脚類恐竜の初期に進化上の革新が現れたことの、証拠を提供する。
アブストラクトほにゃ訳
現生鳥類を最終的に生じた派生した獣脚類恐竜のもっともらしいグループであるマニルプトル形類は、骨格適応の多様かつ顕著な組々を表示する。飛行の進化から離れて、食性の大規模な変化は、これら派生した獣脚類のバウプランにおける特殊化の主要なトリガーの一つとなっているように見える。異なる骨格の特殊化、部分的あるいは完全な無歯顎とケラチン質くちばしの発達のなかで、派生した非鳥獣脚類の進化から、定期的かつ持続的な傾向を形成する。テリジノサウリア類は謎めいたマニラプトル形類のクレードであり、そのメンバーには、肉食から植物食への移行に関連していると考えられる、これらおよび他の骨学上の特徴がある。このことは、これら形態的特徴の機能的意義を評価するために、テリジノサウリア類をその有力候補にする。モンゴルの上部白亜系から産出したテリジノサウルス科である Erlikosaurus andrewsi の高精細生体力学モデルに基づいて、例えばケラチン角鞘などを組み込んだ様々な形態学的構成は、その生体力学的特性が評価される。私たちの結果は、くちばしの発達とケラチン質の角鞘の存在は、ストレスや歪みを分散する助けとなり、頭蓋の吻側部を曲げや変形の影響を受けにくするであろうことを示し、この利点は角鞘をもつ他の脊椎動物クレードに広げることができる。ケラチン質のくちばしは、無歯顎と平行して、このため仮定された飛行の起源に関連する省質量の利点に明確な、頭蓋の安定性を高めるために、派生した獣脚類の初期に発達した進化的革新を表している。
Stephan Lautenschlagera, Lawrence M. Witmer, Perle Altangerel, and Emily J. Rayfield.(2013)
Edentulism, beaks, and biomechanical innovations in the evolution of theropod dinosaurs
PANAS doi: 10.1073/pnas.1310711110 論文
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