モザンビーク北部ニアサ州の約2億5600万年前の地層から、単弓類(哺乳類型爬虫類)化石が発見・記載されました。ディキノドン類、エミドプス上科に属します。
この化石は、9つの組織に属する古生物学者のチーム(PalNiassa)により発見されたもので、Niassodon mfumukasi と命名されています。
属名:"Niassa" 現地で話されているヤオ語(Chiyao)で湖の意味かつモザンビーク北西の州名。+"odontos" ギリシャ語で歯。
種小名:"Mfumukasi" これもモザンビークで話されているニャンジャ語で女王の意味。地元のニャンジャ語母系社会および全てのモザンビークの女性に敬意を表して。
あわせてニアサ湖の女王という意味になりますが、ユーレカアラートによると、さらにニアサ湖(=マラウィ湖)の美しさを意味するそうです。
分類は、単弓類、獣弓類、ディキノドン類、エミドプス上科、キンゴリア科となっています。
標本はモザンビークから産出した化石からの初めての新属であり、頭骨および頭骨以外の骨格の大部分が一緒に産出している稀な例ということです。
この標本に対し、マイクロCTスキャンを使って骨格だけでなく脳もデジタル復元をしています。これにより、哺乳類の脳の多くの機能の進化を理解する上で重要な、初期単弓類の脳解剖学上の新たな情報が明らかになりました。Niassodon について明らかになった、脳と内耳解剖学の復元は、初期単弓類のものとして、これまでで最も詳細なものになっています。断層撮影で得られたデジタルデータを用いて、デジタルの頭骨を復元したわけです。この際、個々の骨の色分けについて、同じ部位の骨であってもこれまで論文ごとに違う色を使っていたのに対し、位相的なカラーコードを作って色分けしているそうです。このコードが将来、他の動物化石でも利用され標準的なものになるかはわかりませんが。
アブストラクトほにゃ訳
ディキノドン類は、ペルム紀後期にもっとも多様化した四肢動物のグループとしてあらわされる。かれらは、ペルム紀‐三畳紀の絶滅を生き延び、ペルム紀‐三畳紀陸上生態系を理解するための中心となっている。ひろく研究されてきたが、ディキノドン類の古生物学のいくつかの側面、神経解剖学、内耳形態学および頭蓋内解剖学などについては曖昧なままになっている。ここに私たちはモザンビークから産出した新しいディキノドン(獣弓類,異歯類):Niassodon
mfumukasi gen. et sp. nov. を記載する。完模式標本 ML1620 は、モザンビーク北部ニアサ州 Metangula 地溝、ペルム紀後期 K5
層から採集されたが、ここは古脊椎動物学にとってほぼ完全に未踏の国と盆地である。シンクロトロン放射ベースのマイクロコンピュータ断層撮影(SRµCT)は、系統解析と相まって、エミドプス上科と共有する形質のセットを示している。個々の骨はデジタルに断片化され、各要素の3次元可視化を可能にした。それに加え、内耳、骨迷路、エンドキャスト、脳神経や血管を再構成した。脳は狭く、小脳は前脳より広いが、それは他の非哺乳類獣弓類の保守的な"爬虫類グレード"形態に似ている。しかし膨大した傍片葉(paraflocculus)は、鳥類と同様の相対容積を占める。水平半規管の向きは、以前に他のディキノドン類で考えられていたより、やや背側に傾いた頭部姿勢を示している。くわえてシンクロトロンデータは、大腿骨の二次骨化中心を示す。したがって
ML1620 は、私たちの知る限り、二次骨化中心の最古の化石証拠を示し、この特徴の進化的起源を押し戻す。この標本が新種を示しているという事実は、東アフリカのペルム紀後期四肢動物相が、いまだ不完全にしか知られていないことを、さし示している。
Castanhinha R, Araújo R, Júnior LC, Angielczyk KD, Martins GG, et al. (2013)
Bringing Dicynodonts Back to Life: Paleobiology and Anatomy of a New Emydopoid Genus from the Upper Permian of Mozambique.
PLoS ONE 8(12): e80974. doi:10.1371/journal.pone.0080974 論文
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