2013年
11月
27日
水
Torosaurus は Triceratops がさらに成長したもの。ジャック・ホーナーが唱える説は、日本でも福井県立恐竜博物館の特別展などを通じ、一般にも知られたものになっています。しかし、それらの頭骨を幾何学的形態測定学の手法で調べ、この結論に反論する研究が出ています。
アブストラクトほにゃ訳
バックグラウンド
個体発生時のフリルの形態学的変化について最近の評価から、マーストリヒチアン後期の角竜、 Torosaurus は、Triceratops の老成体を表しているという仮説が提唱されたが、この知見の受け入れは、いくつかの証拠と争ってきた。
方法論/主な調査結果
Nedoceratops hatcheri、Triceratops属およびTorosaurus属の28頭骨の外側面および36の鱗状骨の頭蓋形態を、ランドマークベースの幾何学的形態測定学の手法で、私たちはこれらの分類群から個体発生の軌跡を比較調査した。主成分分析やクラスター分析は、異なった頭蓋形態を確認した。Torosaurus の形状空間は、十分 Triceratops と分離していたのに対し、Triceratops horridus と Triceratops prorsus は、Triceratops の形状空間内に部分的にオーバーラップしていた。形状とサイズの間の線形回帰は、これら分類群間に異なった個体発生の軌跡があることを示唆する。この結果は、Torosaurus の"伝統的な”分類学的地位を支持する。私たちは、個体発生は Torosaurus と Triceratops で異なったパターンで頭蓋形態を制御することを仮定する。
結論/意義
Torosaurus は、異なった、有効な分類群である。頭蓋全体、フリルのない頭蓋あるいはフリルのみを見ているかどうかにかかわらず、Torosaurus は Triceratops と比べ異なった形態と相対成長の軌跡をしている。この新しいアプローチは、Torosaurus の分類学的地位だけでなく、北米マーストリヒチアン末期のケラトプス科の比較的低い多様性を確認する。
Maiorino L, Farke AA, Kotsakis T, Piras P (2013) Is Torosaurus Triceratops? Geometric Morphometric Evidence of Late Maastrichtian Ceratopsid Dinosaurs . PLoS ONE 8(11): e81608. doi:10.1371/journal.pone.0081608 論文
参考:
John R Horner and Mark B Goodwin.(2006)
Major cranial changes during Triceratops ontogeny
Proc. R. Soc. B 7 November 2006 vol.273 no.1602 2757-2761 論文
Longrich NR, Field DJ (2012)
Torosaurus Is Not Triceratops: Ontogeny in Chasmosaurine Ceratopsids as a Case Study in Dinosaur Taxonomy.
PLoS ONE 7(2): e32623. doi:10.1371/journal.pone.0032623 論文
2013年
8月
12日
月
Yixian(義県)層Lujiatun(陸家屯)単層から産出しているプシッタコサウルス科恐竜、
Psittacosaurus lujiatunensis, P. major およびHongshanosaurus houi について、30の頭骨を三次元幾何学的形態計測を用いて解析し、再評価しています。その結果、同単層から産出しているプシッタコサウルス科恐竜は1種であり、他は Psittacosaurus lujiatunensis のタフォノミー形態型であるとしています。
アブストラクトほにゃ訳
Psittacosaurus は、15の記載された種がある、恐竜では最も豊富な種をもつ属である。この属には、属内および種間変異の詳細な分析を可能にする、地理的にも時間的にも広範囲に分布した、大きなサンプルのサイズがある。私たちはプシッタコサウルス科内の独立した、同時代の3種、中国北西部 Yixian(義県)層Lujiatun(陸家屯)単層から産出した、P. lujiatunensis、P. major、およびHongshanosaurus houi について、それぞれの種について提案された形質の状態の再評価と組み合わせて30個の頭骨サンプルセットの三次元幾何学的形態計測を用いることにより、これら3種の再分析を提示する。私たちは、頭骨を形態空間にプロットしたときに生じる大きな変異は、個体差およびタフォノミーの差によるものであることを、これらの補完的な方法を用いて示す。私たちの結果からは、Lujiatun(陸家屯)単層にはただ1種の Psittacosaurus 属しかなく、記載された3種は P. lujiatunensis のタフォノミーによる変異型であることが実証される。Psittacosaurus 単一種の中に見られる幾何学的形態変異の広い範囲は、、他の恐竜グループに見られる変異幅も種間変異よりはタフォノミーによる歪みに関連していることが可能性があることを意味する。形態空間は主にタフォノミー歪みによる変異によりもたらされたように、本研究では、Psittacosaurus や形質状態の補完的評価のない恐竜グループにおける種間変異を記述するためには、幾何学的形態アプローチのみが細心の注意をもって使用することができることを実証する。本研究では、恐竜の形態空間に立体幾何学的な形態計測の初のアプリケーションを提示するとともに恐竜の頭骨にタフォノミックな変異を定量化する初の試みを提示する。
Hedrick BP, Dodson P (2013)
Lujiatun Psittacosaurids: Understanding Individual and Taphonomic Variation Using 3D Geometric Morphometrics.
PLoS ONE 8(8): e69265.
doi:10.1371/journal.pone.0069265 論文
この論文より数日前に掲載された論文に、こんなものもあります。
Foth C, Rauhut OWM (2013)
The Good, the Bad, and the Ugly: The Influence of Skull Reconstructions and Intraspecific Variability in Studies of Cranial Morphometrics in Theropods and Basal Saurischians.
PLoS ONE 8(8): e72007.
doi:10.1371/journal.pone.0072007 論文
2010年
5月
28日
金
Sinoceratops zhuchengensis 新属新種
北米以外から知られる初のケラトプス科恐竜であり、セントロサウルス亜科の基盤に位置するが、その大きさは他のセントロサウルス亜科角竜の大部分より大きく、カスモサウルス亜科と同程度。またカスモサウルス亜科と同様な特徴もいくつかあるそうです。
2010年
5月
27日
木
ネイチャー5月27日号
compulenta.ru BBC
ハンガリーのIharkútの白亜紀後期層から発掘されたコロノサウルス類角竜類の新種 Ajkaceratops kozmai を記載しています。
モンゴルなど東アジア産のバガケラトプス類に近縁な種類です。これまで後期白亜紀のヨーロッパに角竜類が生息していたとは考えられていませんでしたが、スウェーデンから発見されたレプトケラトプス類のものと思われる歯とあわせ、角竜類が2回以上、ヨーロッパに到達した可能性を示すとしています。
当時のIharkútは西テチス海の群島の一部だったので、島づたいの分散が起こったことをあらわす可能性があるそうです。
Attila Ősi, Richard J. Butler & David B. Weishampel
A Late Cretaceous ceratopsian dinosaur from Europe with Asian affinities
Nature Volume: 465, Pages: 466--468 DOI: doi:10.1038/nature09019