2013年

11月

07日

米、ユタ州から最古のティラノサウルス科恐竜記載

 米、ユタ州の約7000万年前の地層から産出した化石に基づいて、最古のティラノサウルス科恐竜、Lythronax argestes が記載されました。

Lythronax skull reconstruction by Lukas Panzarin
Lythronax skull reconstruction by Lukas Panzarin

 ユタ州南部 Grand Staircase-Escalante National Monumentの約8000万年前Wahweap層(カンパニアン中期)から産出した化石(右上顎、両鼻骨、右前頭骨、左頬骨、左方形骨ほか)に基づき記載されています。
Lythronax argestes 新属新種
属名:'lythron 'ギリシャ語で血のり+'anax'ギリシャ語で王。
   →血まみれの王、流血王と訳した報道もあります。
種小名:'argestes 'ギリシャ語でホメロスに出てくる南西の風。ユタ州が北米で南西に位置することから。

推定体長8m、推定体重2.5t

ティラノサウルス科として最古のメンバーであり、このことから、ティラノサウルス科のララミディア大陸(内海によって区切られた北米の西側の大陸)起源を示唆する。

NHMU Lythronax mount photo by Mark Loewen
NHMU Lythronax mount photo by Mark Loewen

以下、ユタ自然史博物館プレスリリースのファクトシートから。

特徴:細く短い吻部に対し、頭部は幅広い、また眼は正面を向いている。

8,000万年前ということは、これまで知られるティラノサウルス科恐竜のうち最古。

最古のティラノサウルス科恐竜が最も新しい時代のT-REXやタルボサウルスと近縁であるということは、ティラノサウルス科恐竜の大部分が8,000万年前より以前に分岐したに違いないことを意味する。したがって、まだ発見されていないティラノサウルス科恐竜が沢山、発見を待ち望んでいる。

この8,000万年より前のティラノサウルス科恐竜の多様化は、海水面の上昇期と相関し、それはララミディア大陸の異なった地域にかれらを分断し、別々の系統に分かれ進化するようになったのかもしれない。

これは、白亜紀後期のララミディアの多くの脊椎動物についても一般的なパターンで、8000万年前から7400万年前のララミディアの各盆地で非常に多くの種が発見される理由を説明する上で海水面が重要な役割を果たしたのかもしれない。

私たちの分析では、ティラノサウルス科はララミディア北部(北西アメリカ)に起源を発し、時間をかけてララミディア南部に進出し、いくつかの種は白亜紀末(7500~7000万年前)にアジアに移住したことを示している。

Loewen MA, Irmis RB, Sertich JJW, Currie PJ, Sampson SD (2013)

Tyrant Dinosaur Evolution Tracks the Rise and Fall of Late Cretaceous Oceans. PLoS ONE 8(11): e79420. doi:10.1371/journal.pone.0079420 論文

 

47ニュース ユタ自然史博物館プレスリリース ユタ大学ニュース

 

2010年

9月

03日

下甑島でティラノサウルス類の歯など発見

南日本新聞 西日本新聞 毎日新聞 鹿児島テレビ(動画)
 鹿児島県薩摩川内市は3日、下甑島の白亜紀約7000万年前の地層からティラノサウルス類と見られる恐竜の歯とシナミア類とみられる淡水魚の骨とうろこの化石が見つかった事を発表しました。

 昨年9月の化石発掘体験会で発見。発見者は、歯が鹿島中3の蓮見智哉さん(15)、
シナミア類の骨は育英小4年の永田優舞さん(9)。
真鍋真研究主幹によると、歯は顎の前部の歯で長さ38mm、厚さ9mm。全長6~8mのティラノサウルス類の歯である可能性が高いそうです。
甑島の化石展で展示されるそうです。

南半球から初のティラノサウルス上科 3.26.10

  毎日 ケンブリッジ大
 豪ビクトリア州、前期白亜紀、Dinosaur Cove から産出したティラノサウルス上科の恥骨を26日のサイエンスに短報で掲載しています。
 長さ30cmのものですが、派生したティラノサウルス上科の特徴を備えていす。
 これは初めて南半球から産出したティラノサウルス類化石になります。この発見により、北半球に限定していたと思われていたティラノサウルス類の分布が、約1億1千万年前には汎世界的なものになっていたことが伺われます。
 ケンブリッジ大ニュースによると、推定される恐竜の体長は約3m、体重は80kgだそうです。
 Roger B. J. Benson, Paul M. Barrett, Tom H. Rich, Pat Vickers-Rich
 A Southern Tyrant Reptile
 Science 26 March 2010: Vol. 327. no.5973, p.1613

 DOI:10.1126/science.1187456
 参考:Dinosaur Dreaming

米、ニューメキシコ州産出の新しいティラノサウルス上科

Carr, Thomas D. and Williamson, Thomas E.(2010)
Bistahieversor sealeyi, gen. et sp. nov., a new tyrannosauroid from New Mexico and the origin of deep snouts in Tyrannosauroidea
Journal of VertebratePaleontology, 30: 1, 1 ? 16 DOI:10.1080/02724630903413032

 米ニューメキシコ州、上部カンパニアンから産出したティラノサウルス上科 恐竜を記載しています。 
Bistahieversor sealeyi 新属新種
属名:産出層adobe層のある土地の区域Bisti Wilderness Areaから+"eversor"
   ギリシャ語で破壊者。この恐竜が肉食と推定されることから。
種小名:完模式標本の発見者、ニューメキシコ自然史博物館の研究員Mr. Paul Sealeyに献名。

完模式標本:NMMNH P-27469 関節した頭蓋および骨格。ただし、本論文執筆時には、頭蓋以外の骨格はまだ剖出途中です。頭蓋長は最大1070mmとしています。
ほかにNMMNH P-25049 幼体の不完全な頭蓋と骨格などがあります。論文には両頭蓋の図版が掲載されています。 

固有派生形質:前上顎骨の口蓋突起が二股になっている、鼻骨に過剰前頭突起がある、鼻骨に穂先状内側前頭突起がある、ほかの特徴があり、論文中に図版でも示されています。


系統上の位置づけ:本論文で行われた系統分析では、これまで一緒に分析されてこなかった基盤的ティラノサウルス類 Dilong, Guanlong, Tanycolagreus, Coelurus, Iliosuchus, Stokesosaurus, Aviatyrannis 及び Eotyrannus を含めて分析しています。その結果、Bistahieversor sealeyi はティラノサウルス上科の中で、Appalachiosaurus, Alioramus, Dryptosaurus 及びティラノサウルス科と未確定の多系統をなしています。またティラノサウルス科が単系統であることを示し、Albertosaurus はティラノサウルス亜科の姉妹群である。ティラノサウルス属は単系統であり、最も近縁の外群はDaspletosaurus及びユタ産の新分類群であるとしています。一方、ティラノサウルス上科においてはAlectrosaurus,
 Bagaraatan, Aviatyrannis, Eotyrannus, Stokesosaurus および Iliosuchus は多系統であり、これらに対し基盤的なのがDilongTanycolagreus としています。
 さらに、Coelurusは同上科からはずれ、Guanlong はコエルロサウリア類からもはずれ、Monolophosaurus と姉妹群をなすとしています。

 この発見により、北米西部の上部カンパニアンおよびマーストリヒチアンでは山々に隔てられた盆地ごとに異なったティラノサウルス上科の種または属が見られるが、上部マーストリヒチアンでは、Tyrannosaurus rex のみ見られるのと対照的であるとしています。
 上顎骨の水平枝の浅深:本論文では上顎骨の水平枝とりわけ歯のある部分の深さ(側面から見た骨の幅)に注目しています。Bistahieversor とティラノサウルス科においてはこの部分は幅広いですが、Dilong, Appalachiosaurus, Alioramus や他の外群では幅狭いものになっています。これは、ティラノサウルス類の深い(側面が幅広い)上顎骨は、後期白亜紀のティラノサウルス上科の共通祖先において米北西部で最初に進化し、後にアジアにも分散したものと仮説を立てています。
 ただし、論文最後の付録で、前記白亜紀中国で発見されたRaptorex kriegsteini に触れています。この恐竜は大型ティラノサウルス科に対し小型ティラノサウルス上科であるが、前肢の縮小が既に見られる。発見された標本は亜成体で、その上顎骨の歯のある部分は幅狭いが、筆者らは、この恐竜が成体になった時には幅広くなるだろうと仮説しています。
 そうすると、幅広い上顎骨の適応はカンパニアンより遥か以前、北米ではなくアジアに起源をもつことになるとしています。